2023年秋季低温工学・超電導学会 セッション報告

12月4日(月)
A会場

薄膜・線材作製 1A-a01-07 座長 藤田 真司

1A-a01:下山(青学大)らは、酸素組成比を緻密に制御したY123焼結体の格子定数、TcIcについて報告した。酸素欠損量の増加に伴いTcが低下する
こと、Icは最適ドープ状態よりもややオーバードープ状態の方が高いこと等が示された。
1A-a02:李(名大)らは、異なる成膜温度で作製したYBCO薄膜に、曲げ歪を印加した状態で酸素アニールすることで、酸素量の変化によるTcの変化を
報告した。成膜温度によって歪印加アニール時のTc変化の挙動が異なる結果であった。
1A-a03:堀口(青学大)らは、フッ素フリーMOD法によるRE123薄膜の高臨界電流化を目的として、REをYとGdの混合とした場合の特性を報告した。YGd123
単体膜よりもY123上にYGd123を成膜した方が厚膜化時のIc向上が大きい結果であった。
1A-a04:海谷(成蹊大)らは、TFA-MOD法を用いて成膜したLa2-xBaxCuO4(LBCO)薄膜のBa組成比依存性について報告した。LBCOと格子ミスマッチの
小さいLaAlO3単結晶基板上を用いることで、TcのBa組成比依存性はバルク体と同様の傾向を示した。
1A-a05:木許(九大)らは、REBCO薄膜の磁場シールド応用を目的として、溶性の基板上にREBCO薄膜を形成し、PET等の樹脂シートを貼合せた後に基板を
溶解させることで、樹脂シートとREBCO薄膜の複合材を作製する検討を報告した。REBCO成膜プロセスは高温であることから、水溶性かつ融点の高いNaClを
基板とし、比較的成膜温度の低いLuBCO薄膜を作製したが、BaとClの反応やクラック発生があり、さらなる検討が必要である。
1A-a06:山下(東芝)らは、REBCO線材のヒステリシス損失低減を目的とした細線化を検討しており、TFA-MOD法でYBCOと非超電導体のYPrBCOを
ストライプ状に形成した構造について報告した。塗布プロセスを改善することで150 μm程度の細線でも1 MA/cm2以上の高Jcを維持した。
1A-a07:西山(室蘭工大)らは、多数のローラーカッターでREBCO線材に長手方向の傷を入れることで多芯REBCO線材を作製し、磁化測定で測定した
ヒステリシス損失が大きく低減することを報告した。


回転機(2) 1A-p01-05 座長 小川 純

1A-p01 中村(京都大学):ポインティングベクトルを用いた高温超電導誘導同期モータの電気-機械エネルギー変換における解析についての報告
が行われ、超電導特有の現象についての解説が行われた。
1A-p02 山本(京都大学):京都大学のグループから、水素エンジン車用の250rpm、3kW級液体水素ポンプ用の高温超電導誘導同期モータの解析を
もとにした電磁設計の紹介が行われた。
1A-p03 寺尾(東京大学):東京大学、関西学院大学のグループから、積層超電導体を使用した磁気軸受のばね定数と回転損失に関する報告が行われ、
積層超伝導体でもバルク体と同じような効果が期待できることが実験により示された。
1A-p04 中川(鹿児島大学):鹿児島大学、九州大学のグループから、空芯型REBCO誘導電動機用回転子の損失特性に関する報告が行われ、かご型
超電導回転子に回転磁界を印加した時の損失特性が示された。
1A-p05 佐々(九州大学):九州大学のグループから、電動航空機用REBCO全超電導同期機の解析にもとづく設計についての報告があり、直流磁界、
温度、臨界電流特性を10枚重ねとして交流損失特性評価を行い基準となる損失モデルを決定し、電磁界・熱解析から回転機内の交流損失を導出する
手法の解説が行われた。


HTS要素技術 1A-p06-10 座長 植田 浩史

1A-p06:田中(上智大) 上智大・理研では、無絶縁HTS線材をレイヤー巻きしながら、レイヤー間を片面が絶縁された銅シートを挿入するintra-Layer
No-insulation (LNI) 法を提案している。クエンチ時は銅シートに電流がバイパスし、コイルを保護する。このLNI-REBCOコイルでは、銅シートと線材
間で100 mΩcm2級の抵抗が必要であり.これまでは銅シートと線材間の接触状態の制御が難しかった。本報告では、絶縁性フィラー、導電性フィラーを
混合したエポキシ樹脂により、抵抗値を選択できる界面を形成できることを実験的に示した。
1A-p07:川畑(上智大)1A-p06の関連発表で、界面抵抗制御を施したLNI-REBCOコイルを試作し、サーマルサイクルやクエンチ時の抵抗値の振舞いを
調べた。サーマルサイクルを繰り返すと抵抗が徐々に増加し、飽和したが、I-V特性の劣化は確認されなかった。一方.クエンチ試験では、銅シートへ
の電流バイパスにより自己保護性が確認され、I-V特性の劣化も確認されなかったが、抵抗値がクエンチ後に低下する現象が観測された。今後の検討課題
とのことであった。1A-p06、 07を通して、接触抵抗の定義について質問があった。
1A-p08:今川(NIFS) REBCOコイルの液体水素中の熱暴走試験の報告である。REBCO線材は、巻線前に半径3 mmの両面曲げ加工により局所劣化させた
ものである。REBCO線材の銅テープを共巻きしたコイルと、REBCO線材単体で巻線したコイルで試験を行った。
1A-p09:川越 (鹿児島大) ステンレステープを共巻きした無絶縁YBCOコイルの交流損失特性の測定と解析の報告であった。損失特性は、低周波では
ヒステリシス損失、高周波ではターン間の結合損失が支配的となった。
1A-p10:上垣 (京大) HTSコイルに磁性体を組み合わせることにより、HTS線材が経験する磁界を変化させ、臨界電流や交流損失が変化する。磁性体の
ヒステリシス損失や渦電流損失も付加される。本報告では、HTSコイルの上下に圧粉鉄心を配置し、損失を測定した。磁性体の損失を分離するため、コア
ありHTSコイル、コアなしHTSコイル、コアあり銅コイル、コアなし銅コイルの損失特性を測定した。


マグネット要素技術 1A-p11-13 座長 横山 彰一

本セッションでは3件の講演があり、初日最後で少し遅めからの開始にも関わらず50名程度の聴講者が参加。活発な質疑がなされ、低温超電導
に関する技術にも多くの関心があることが確認できた。
1A-p11 Nb3Sn 超電導マグネットの含浸ための高比熱樹脂の研究と題しNIMS菊池らより発表。加速器用Nb3Snマグネットの固定含浸材に
エポキシに代えてゴム系のジシクロペンタジエンを採用。この樹脂は常温で低粘度であり4 Kで高比熱材のGd系化合物をフィラーとして添加MQE
することで向上を狙う。従来のエポキシ材と比較するためにテストコイルで含浸しトレーニング効果を評価したところジシクロペンタジエン
はトレーニングなしでほぼIcまで励磁でき良好な結果であった。発表後、新材料の耐クエンチ性改善に対する期待の意見と質問が多くあった。
1A-p12 マグネット含浸用樹脂のガンマ線照射前後での曲げ強度と題しKEK王らより発表。上記発表のジシクロペンタジエン樹脂のガンマ線
照射による機械特性の変化を測定した。試料は無垢材とGd系化合物フィラー添加試料で比較。線量3 M~9 MGyで三点曲げ評価を実施。エポキシ
材に比べ弾性は低いが粘り強さが大きい。照射後の変化はエポキシに比べ高線量まで特性劣化しにくい様子。今後マルチウイグラーコイルに
適用を検討している。
1A-p13 NbTi/Cu 線の冷却安定性に対する銅線の影響に関する実験と研究と題し総研大島本らより発表。核融合などで用いられる大容量CIC
導体の冷却安定化のために銅線を抱き合わせるが、その撚りピッチの効果を短尺導体のクエンチ伝播について実験と解析にて検討した。実験
結果と解析は良い一致が得られた。




12月4日(月)
B会場

環境・磁場応用 1B-a01-06 座長 柳 長門

「環境・磁場応用」のセッションにおいて、以下の6件の発表があった。
1B-a01 野村 新一(明治大):「誘導加熱の電気機器学的考察と回転磁石式誘導加熱法の提案」
誘導加熱法を効率化するため、アルミビレットを固定して超伝導コイルを回転させる「回転磁石式誘導加熱法」を提案、従来方式との比較検討
を行った。
1B-a02 押本 夏佳(山梨大):「超伝導バルクコイルを用いたワイヤレス電力伝送のための冷却システムの開発及びそれを用いた温度依存性の評価」
ワイヤレス電力伝送のため超伝導バルクコイルを送受電に用いるシステムを開発し、渦電流を抑えた低温容器に電磁界シミュレーションで最適化
したコイルを配置して実験を行い、温度25 Kでは77 Kと比べて伝送効率が約6倍向上することがわかった。
1B-a03 佐々木 修平 (福島高専):「超電導コイルを用いた磁気浮上型免震装置の磁気浮上力特性に関する検討」
超伝導磁気浮上型免震装置の開発において、超伝導コイルと超伝導バルク材との組み合わせについて調べ、磁場勾配が大きくなる位置で超伝導
コイルを着磁させる方法によって有効な磁気浮上力を得られることがわかった。
1B-a04 江村 寛(神戸大):「リスク物質の濃縮回収のための球状磁気フィルタを用いた磁気分離プロセス」
リスク物質の分離回収方法としてステンレス球磁気フィルタを用いた高勾配磁気分離技術を開発しており、模擬リスク物質を用いた実験を行い、
磁気フィルタ充填率等の観点から分離率と回収率を評価した。
1B-a05 西島 元(NIMS):「磁気冷凍システム向けBi-2223超伝導マグネットの開発—性能評価試験—」
NIMSを中心に進められている水素液化用磁気冷凍システム開発では、磁気冷凍システム用高温超伝導マグネット開発に取り組んでおり、Bi-2223
マグネット(定格4.8 T)の性能評価試験結果について報告された。
1B-a06 東川 甲平(九大):「SMESケーブルを用いた直流マイクログリッドの最適電源構成に関する検討」
エネルギー貯蔵機能を有する超伝導SMESケーブルの直流マイクログリッドにおける運用を提案し、長さ10 mのシステムを製作して実験を行うと
ともに、再生可能エネルギーの出力変動補償について効率やコストの観点から最適電源構成を検討した。


加速器・核融合 1B-p01-05 座長 小野寺 優太

1B-p01:菅野(KEK)らは、LHC高輝度化アップグレード用超伝導磁石の開発と進捗について報告した。7 m長実証機コールドマス製造が完了し、
CERNに輸送されている。試験項目の詳細や構造材について質疑が行われた。
1B-p02:鈴木(KEK)らは、LHC高輝度化アップグレード用超伝導磁石の実機1号機の性能試験結果について報告した。設備の改良を行うことで、
受入電流13.23 kAまでのトレーニングを完遂し、磁場測定によって設計通りの性能であることがわかった。設備の改良点の一つであるバリスタ
(非線形抵抗器)について質疑が行われた。
1B-p03:谷貝(上智大)らは、アルミ安定化MgB2導体の開発に向けて、アルミ板による導体の安定性についての検証結果を報告した。様々な
純度のアルミ板に単線MgB2をはんだ付けし、電流分布について計測することで電流拡散係数の違いにより分流傾向が変化することを示した。
アルミ抵抗率の温度依存性や薄肉化への目処について質疑が行われた。
1B-p04:村上(量研機構)らは、JT-60SA超伝導コイルの第二回運転結果について報告した。全コイルの複合通電試験の結果、安定に運転できる
ことを示し、プラズマ運転に向けた健全性を確認できている。また、PFのクエンチ検出器の調整・改造中である。運転時の通電方式やコイル保護
について質疑が行われた。
1B-p05:辺見(量研機構)は、ITER TFコイル製作における成果について報告した。製作精度の向上方法の詳細や、組み上げ前後における性能試験
方法について質疑が行われた。


HTS臨界電流 1B-p06-11 座長 土井 俊哉

本セッションでは、6件の報告があり、活発な討論が行われた。
1B-p06:松本(九工大)らは、REBCO線材に人工ピンとして導入されるナノロッドの体積分率の上限が5~10%であることを指摘し、その原因について
詳細な議論を行った。REBCO薄膜にBHOナノロッド濃度を変えて導入した場合、低濃度ではナノロッドが形成されるが、高濃度ではナノロッド構造が
崩れ、基板面に平衡方向のBHOの層状構造が現れることを実験的に示し、その原因が歪エネルギーの緩和と動力学的な競合に依るとした。
1B-p07:大崎(青学大)らは、フッ素フリーMOD法で作製したREBCO薄膜の表面にAg層を形成した後に熱処理することで、REBCO薄膜中に247層が形成され、
それがピンニングセンターとして働くことにより、Jcが向上することを報告した。
1B-p08:青砥(成蹊大)らは、IBAD基板上にTFA-MOD法を用いてBHO添加量を広い範囲で変化させた(Y,Gd)BCO薄膜試料を作製し、その微細構造および
超伝導特性を報告した。
1B-p09:木須(九大)らは、IBAD-PLD法REBCO線材のIcの長手方向分布Ic(x)を様々な温度、磁場中で測定し、Icの温度、磁場依存性は試料内の空間位置
に依らずほぼ同一であることを示した。この結果は低温高磁場下の長尺REBCO線材のIc(T, B, x)を、77 Kの測定結果Ic(77, 0, x)と短尺試料で測定した
Ic(T, B)から精度良く予測できることを示しており、実用上非常に有益な知見であると思われる。
1B-p10:佐藤(SWCC)らは、TFA-MOD法を用いたBZOナノ粒子を導入したYGdBCO線材の製造に際し、Reel-to-Reel式本焼炉を使用することで、配向性が
低下せず、均一性の高い線材が得られるようになったことを報告した。
1B-p11:齋藤(成蹊大)らは、TFA-MOD法で作製したBZOナノ粒子導入YGdBCO線材の中間熱処理、本焼プロセス、酸素アニール条件を詳細に検討し、
ホール濃度と超伝導特性についての詳細な議論を行った。




12月4日(月)
C会場

デバイス応用 1C-p01-08 座長 日高 睦夫

デバイス応用セッションでは7件の口頭発表が行われた。
1C-a01:廿日出(近畿大)は、配管腐食を高温超電導SQUIDを用いて検出する磁歪式ガイド波試験技術の開発を行っている。今回は円筒形
電磁石を用いて200 mm程度の保温材の上からでも検出可能な新たな方法が提案された。受信部では磁気信号が常温磁束トランスにより高温
超電導SQUIDに伝達されるため、SQUIDは配管から離して設置することが可能となった。
1C-a02:中条(埼玉大)は、超伝導共振器のQ値を上げるために凹部を形成したグランドプレーン(GNP)と別基板に形成した共振器を張り
合わせることで、GNPと共振器間の誘電体を無くした構造の共振器を作製した。まず、共振周波数のGNP凹部深さ依存性を実験で求め、深さ
が小さくなるほど共振周波数は高周波側にシフトすることを確認した。
1C-a03:野口(埼玉大)は、STJ検出器におけるSi基板に起因する低エネルギー領域での雑音を低減するために、基板とSTJ検出器の間
に酸化膜、超伝導膜、金属膜のBufferを形成し、材料の違いによるノイズ低減効果を検証した。その結果、金属膜が最もノイズ低減効果が
高いことが明らかとなった。
横浜国大から3件の超電導SFQ回路による新しいアーキテクチャへの応用が発表された。
1C-a05:山中は予測や診断に用いられるベイジアンネットワーク(BN)の条件付確率表(CPT)の再編集が可能な回路を提案した。まず、
2ノードのBNを設計し、5つのCPT内容が再編集可能であることをシミュレーションで確認した。
1C-a06:鈴木はSFQ回路によるパターンマッチング検知により問題ある文字列を検出することによるネットワーク型侵入検知システム(NIDS)
の提案を行った。SFQ正規表現対応パターンマッチング回路の設計・動作確認を行い、初歩的なNIDSが実現可能であることを示した。
1C-a07:浅香はデータの出現確率により演算を行うストカスティックコンピューティング(SC)のSFQ乱数発生器を用いた実現をシミュレー
ションおよび実験で示した。1C-a08:藤江(埼玉大)は、超伝導検出器MKIDアレイからの出力を信号処理するためのSQUIDデジタル型AD変換
回路、デジタルミキサー、デシメションフィルターのシミュレーションおよび設計を行い、回路面積や消費電力の見積りを行った。


小型冷凍機 1C-p01-04 座長 平山 貴士

本セッションは小型冷凍機について3件の報告がなされた。なお1C-p02はキャンセルされた。
1C-p01:安田(住友重機械)から、2段スターリング冷凍機の蓄冷材として金メッシュを搭載した結果について報告された。冷凍機到達温度は
従来のSUSメッシュと比較して低減し、金メッシュの有用性を示した。
1C-p03:平野(NIFS)から、YBCOバルク体を用いた遮蔽型磁気冷凍機について報告された。YBCOバルクの遮蔽能力を60 K程度と、77 Kの2点で
実測したのち、20Kレベルの遮蔽能力を算出した。その結果、20 Kにおいて5T程度の遮蔽能力を有し、磁気冷凍機として使用可能レベルである
ことが示された。
1C-p04:脇(鉄道総研)から、LC回路の共振現象を利用した磁場振動発生手法について報告された。REBCOコイルと市販コンデンサを組み合わせて
16 Hzの磁場変動生成に成功し、静止型磁気冷凍へ適用可能性を示した。今後、周波数低減化と抵抗成分による減衰対策についてさらなる開発を
行うとのこと。


極低温システム 1C-p05-08 座長 濱口 真司

極低温システムに関連した多岐にわたる話題が4件報告された。
「1C-p05:中川(産総研)」では、希釈冷凍機の熱交換器材の銀微粒子焼結体と4He間の熱抵抗を1 K以下の温度領域で測定した結果が報告された。
この温度領域の熱輸送で支配的となる4Heのフォノンの平均自由行程を考慮すると銀焼結体の微細構造は熱交換に寄与していない可能性が示された。
熱交換器表面の構造サイズの最適化や理論の構築など、今後の発展が期待される。
「1C-p06:中西(KEK)」では、ILCに向けた取り組みとしてクライオモジュールを試験するための極低温設備の検討状況が報告された。本設備には
既設の一般則のヘリウム液化冷凍機が流用され、ILCの計画に合わせて輻射シールドの冷却に40 Kのヘリウムガスも供給する。また、クライオモジュール
は冷凍則のため法対応も進められるとのことである。
「1C-p07:宗(KEK)」は、SuperKEKBのQCSクライオスタットの真空断熱層のリークに関する報告で、原因はOリングの再利用と推定されている。
「1C-p08:鷺山(東大)」は、超電導・極低温機器の安全と信頼性のアンケートに関する報告である。有用なアンケート実施のため、ワーキング
グループが設立されたこと、検討状況および今後の予定について報告された。本アンケートは将来の超電導技術の標準化や安全テキストの作成に
貢献すると考えられ、超電導・低温工学分野の発展には欠かせない重要な活動である。




12月4日(月)
P会場 ポスターセッションI

Nb3Sn機械特性 1P-p01 座長 伴野 信哉

1P-p01:大同大の片山氏より、Nb3Snを模擬した横圧縮変形におけるひずみ分布の予測について報告があった。今回はNb3Sn線の代わりに銅線と
エラストマーを用い、デジタル画像相関法(DIC)という手法で実際に横圧縮応力をかけた材料のひずみ分布解析を行った。材料のひずみ状態が
視覚的にわかりやすく表現される。実際のNb3Sn線材に対し、断面特徴をスプレーによるランダムパターンの代わりに利用して解析できるかが
注目される。


HTS臨界電流(1) 1P-p02-06 座長 松本 要



HTS薄膜・バルク 1P-p07-11 座長 井上 昌睦

1P-p07:佐藤(大同大)らは、REBCO線材及びBSCCO線材の断面形状を実体顕微鏡観察にて調べた結果について報告した。今回は断面積とエッジ部の形状を
中心に調べており、今後は対称性や統計性を含めた展開が期待される。
1P-p08:島田(九工大)らは、REBCO線材の面内の電流と電界が縦磁界下でどのように振舞うのかを調べた結果について報告した。ICコネクターを用いた電界
計測により磁界と電界の角度差を磁場強度及び線材長を変えて測定している。角度差は磁場が弱いほど、また、線材長が短いほど大きくなるとのことである。
1P-p09:舩木(島根大)らは、導電性中間層としてLaNiO3薄膜の形成に取り組んだ結果について報告した。還元雰囲気中でスパッタ法により成膜したLaNiO3
は、酸素アニール環境で熱処理を施したところ0.5 mΩcm@77 K程度まで抵抗率が低下したとのことである。
1P-p10:藤本(九大)らは、Zrを細線状にパターニングしたSTO基板上にTFA-MOD法でYBCO薄膜を成膜した際の、Zr近傍の微細組織観察結果について報告した。
TEM-SPEDによる結晶相と方位の観察により、STO基板上にはZrO2が、その上部には配向が乱れたYBCO相が形成していることが明らかとなっている。この他、
粒子状のCuOが観察されているが、これらはZrから離れた位置でも観察されており、Zrの影響によるのかは今後の調査が待たれる。
1P-p11:矢野(鉄道総研)らは、試料の中心から外周に向けて包晶温度が低くなるように希土類元素組成を配置するRE元素組成勾配法にて(Y,Er)BCOバルクを
作製した結果について報告した。本手法により、直径60 mmの(Y,Er)BCOバルクが作製できたとのことである。


MgB2(1) 1P-p12-14 座長 田中 秀樹

1P-p12:許(明治大)らは、MgB2ラザフォード導体を用いた冷凍機冷却超電導コイルに関し、熱処理前素線の撚線加工に伴う臨界電流の低下を
検討しており、曲げひずみを加えたサンプル線材の冷凍機冷却での臨界電流評価方法について報告した。実測では、予想より低い電流値で電圧
上昇が見られ、サンプル冷却の改善等が必要と思われる。
1P-p13:矢島(明治大)らは、1P-p12に関連して、MgB2ラザフォード導体短尺試験に向けた断熱二重容器の冷凍機冷却試験を報告した。冷凍機
の1stステージで輻射シールドを、2ndステージで評価対象を冷却する一般的な構造であり、10 K以下までの冷却を実現した。
1P-p14:町屋(大同大)らは、MgB2線材の中性子散乱によるひずみ測定を報告した。NIFSで開発された11BリッチなMgB2線材を対象とし、室温
での引張り荷重を加えつつ中性子散乱でMgB2の格子定数(ac)を成功裏に測定した。得られた結果は、MgB2フィラメントが圧縮の残留ひずみ
を有していることを示していた。


MgB2コイル 1P-p15-16 座長 菊池 章弘

本セッションでは2つのポスター発表があった。
1P-p15:日立製作所の青木氏から高抵抗PCS線を用いたMgB2コイルの永久電流運転についての発表であった。MgB2コイルは伝導冷却による無冷媒での運用が期待
されているが、無冷媒では冷却速度が遅くなり永久電流スイッチ(PCS)のオン時間が長くなることが課題であった。同氏らの研究グループでは、常電導転移する
と高い抵抗を示すニオブチタンをシース材とした高抵抗PCS線を開発し、PCSの熱容量を下げることで、オン時間を数分程度まで短縮することを目標としている。
今回は高抵抗PCS線を直径120 ㎜の小型MgB2コイルに適用し、伝導冷却にて問題なく永久電流運転できた<結果が報告された。
1P-p16:同じく日立製作所の古賀氏等と東京農工大の山本氏の研究グループから、10 Kで定格磁場2 Tの小径MgB2超電導コイルの作製及び励磁試験の結果について
の発表であった。コイルは伝導冷却で10 Kまで冷却し、0.3 A/sでの高速励磁試験や定格励磁状態で昇温して意図的にクエンチさせる試験を実施し、いずれも問題
ないことを確認した。なお、クエンチ試験ではクエンチ時のコイル線材表面温度は約19 Kであったが、その後の再冷却と再励磁でコイルに劣化がないことも確認した。


回転機(1) 1P-p17-23 座長 野村 新一

回転機(1)のセッションでは7件のポスター発表があった。
1P-p17:河野(東大)氏からは、車載用液体水素ポンプへの適用を前提に、MgB2線材を用いた0.75 kWの超電導同期モータを設計し、電磁解析による
交流損失、運転可能持続時間と回転機重量の解析結果が報告された。
1P-p18:石田(関西学院大)氏からは、超電導発電機応用を考えた液体水素冷却高温超電導ダブルパンケーキコイルを用いて液体水素の供給が停止した場合の
模擬試験を行い、コイルが液面から完全に露出してもしばらくは通電が可能であるという結果が報告された。
1P-p19:井浦(福岡工大)氏からは、かご型高温超電導回転機のローターバーを構成するレーストラック型パンケーキコイルを製作し、永久磁石を用いた着磁
特性の実験結果と解析結果が報告された。
1P-p20:奥村(東大)氏からは、全超電導回転機への適用を想定し、MgB2多芯線の回転磁界下での結合損失とヒステリシス損、および印加回転磁界
に高調波成分が重畳した場合の数値解析が報告された。
1P-p21:吉田(新潟大)氏からは、界磁巻線を無絶縁高温超伝導コイルとした場合の20 MW級同期電動機のベクトル制御特性について、弱め界磁制御を含めた
速度制御シミュレーション結果が報告された。
1P-p22:纐纈(新潟大)氏からは、ダブルロータ構造とトロイダル巻線型高温超伝導固定子を有するアキシャルギャップ型高温超伝導誘導電動機の2 kW小型
モデル機開発のための電気設計を行い電動機特性の解析結果が報告された。
1P-p23:原島(東大)氏からは、回転子を永久磁石、固定子をバルク超電導体とした超電導磁気軸受を分割構造とした場合について、分割固定子のパラメータ
と不均一磁場中でのバルク体の着磁特性に関する解析結果が報告された。




12月5日(火)
A会場

核融合用導体 2A-a01-07 座長 辺見 努

2A-a01: 摺木(鹿児島大)REBCOテープを積層してアルミジャケットに挿入したFAIR導体の外部磁場下の交流損失特性を評価した結果が
報告された。テープ面に平行な外部磁場での交流損失特性はテープ間及びテープ・ジャケット間の機械的・電気的な接触状況のばらつき
による影響を示しているとのことであった。
2A-a02: 柳(NIFS)単純積層型(STARS)導体について、励磁速度による安定性について実験と解析から検討が行われた。STARS導体でも
高速な励磁は可能であり、NbTiのような熱的な不安定性はないとことであった。STARS導体の設計マージンとして、臨界電流の80%程度で
あれば安定に運転できる可能性があると指摘された。
2A-a03: 小野寺(NIFS)回転磁化によるREBCOテープの劣化位置の評価について報告された。検出する欠陥のサイズについて、ターゲット
をどうするか議論が行われた。
2A-a04: 田村(NIFS)ヘリカル型核融合炉(HESTIA)用REBCO導体について機械的挙動について報告された。
2A-a05: 成嶋(NIFS)単純積層REBCO(WISE)導体について、エッジ方向ひずみの評価結果が報告された。幅方向のずれ及び表面状況の
違いによる影響について議論が行われた。また、大幅な枚数を増やしても基本的な振る舞いは同じであると説明された。
2A-a06: 諏訪(量研機構)Nb3Sn導体の短ツイストピッチの効果について中性子回折で調べた結果が報告された。導体のモデル化に関する
研究に役立つというコメントがあった。また、他形式の角型導体ではどうなるか、冷却昇温での影響はどうかなど、活発な議論が行われた。
2A-a07: 伴野(NIMS)Nb3Sn線の高強度化について、交差接触応力下での特性評価について報告された。過去の試験結果の比較や試験結果
の可逆性について議論が行われた。




12月5日(火)
B会場

MgB2(2) 2B-a01-07 座長 木内 勝

2B-a01:田中(日立)らは、線材断面構成の異なるMgB2線材を対象に、室温と液体ヘリウム中で曲げ及び引っ張りひずみを加え、Icの測定結果
からひずみ耐性を調べ、その結果を報告した。
2B-a02:祖父江(京大)らは、MgB2多芯線の結合時定数・結合損失を実験的に評価した。時定数と一本あたりの結合損失の形状因子の温度依存性
を調べ、4.2 Kと20 Kでの変化率の違いは、等価横断導電率の変化に起因することを示した。
2B-a03:菊池(NIMS)らは、最外皮の金属シースにモネルを用いたPIT法MgB2を開発し、50 µm径で4 km、33 µm径で3 km、さらに、世界最細の
15 µm径でも135 mの線材作製を報告した。
2B-a04:松本(NIMS)らは、プレミックスIMD- MgB2線材の作製方法にプロセスインフォマティクスを適用し、条件最適化により、予期しない条件
での最適化を見つけられる可能性を示した。
2B-a05:岩崎(青学大)らは、B:ホウ素の粒径に注目しMgB2バルクの高Jc化を行った。従来から用いている50 µm粒径のB粉末に100 nm粒径のB粉末
を混合しPremix PICT拡散法を用いることにより、50 µm粒径のJcに比べて、3倍以上高いJcが得られることを示した。
2B-a06:関口(青学大)らは、過剰Bの割合を増やして作製した前駆体粉末で作製したMgB2バルクの臨界電流特性を報告した。特に、過剰Bの割合を
増やすと低磁界領域のJcは低下するが、4 T付近では高いJcが得られることを示した。
2B-a07:大島(神戸大)らは、MgB2線材を用いた液体水素用液面センサーの開発において、高感度のセンサーを得るためには液体水素沸点近傍のTc
有するMgB2線材を用いることが重要で、この目的でBの粒径とTcの関係を調べた。今回は10 µm粒径のBで最も低いTc ~33.6 Kが得られ、低Tc化のため
にはさらなる調査が必要とコメントした。




12月5日(火)
C会場

水素液化用磁気冷凍機 2C-a01-06 座長 平野 直樹

本セッションは、JST未来社会創造事業・大規模プロジェクトとして進行中の「磁気冷凍技術による革新的水素液化システムの開発」に関する、
全体計画、磁性材料、アクチュエータ、熱交換器、低温ポンプ、ならびに排熱用のGM冷凍機について6件の口頭発表があった。
2C-a01:沼澤(NIMS)らは、プロジェクトの全体概要や2つの実証研究の目標について丁寧に説明し、現在はステージ2の試作機の実証研究段階
の2年目であると紹介した。磁気冷凍材料での大きな特性向上や水素液化の実証も行われており、順調にプロジェクトが進行していることが
感じられた。
2C-a02:長谷川(金沢大)らは、水素液化磁気冷凍用材料として大きな磁気熱量効果を持つHoB2の磁場中での熱伝導率や電気抵抗率を測定した
結果を報告した。また、電気抵抗率から渦電流発熱を見積もった結果、冷凍性能には影響がほとんどないことを確認した。
2C-a03:大前(筑波大)らは、磁性材料に磁場変化を与えるために超伝導コイル内部に材料を出し入れするのに必要なアクチュエータについて、
バネを利用することで仕事量を低減させる方法を提案し、解析により仕事量が低減できることを報告した。想定したバネ定数も実装可能との
ことであった。
2C-a04:白井(筑波大)らは、磁気熱量効果でヘリウムガスを冷却し、水素ガスと熱交換することで液化する機構において、最適な熱交換方式
を検討した。ハンプソン式熱交換器が最も適しているという熱流束などの計算結果を、他の熱交換方式との比較により示した。
2C-a05:西岡(NIMS)らは、極低温冷凍機用コンプレッサーに代わる低温ポンプとして、ベローズ式低温ポンプの開発を行っている。コンプレッサー
に比べ消費電力が極めて小さくできることが示され、能動的蓄冷式磁気冷凍の高効率化に有用であると発表した。高耐圧化や長期繰返の信頼性
検証など今後の進展を期待したい。
2C-a06:増山(大島商船高専)らは、磁気冷凍機の高温端の排熱用GM冷凍機の効率向上を目指し、1台のコンプレッサーで2台のコールドヘッドを
同相運転することで高効率化を実証した。従来のGM冷凍機の冷凍能力(%カルノー)に比べ頭2つほど向上することを報告した。




12月5日(火)
P会場 ポスターセッションII

教育・セミナー 2P-p01-04 座長 増山 新二

本セッションは、4年ぶりに開催された低温技術夏合宿「77 K小型冷凍機を作ろう」の報告が3件、大学の物理教育に関する取り組みが1件の
計4件の報告があった。
2P-p01:結束 (KEK) らは、1段パルス管冷凍機のダブルインレットバルブの開度による到達温度の影響を報告した。限られた実験時間の中で
バルブ開度の最適値を見出し、36.4 Kという、とても低い到達温度が得られた。
2P-p02:金山 (KEK) らは、1段パルス管冷凍機の温度測定に熱電対と白金温度計を使用し、これらの指示値の差を報告した。初めは、熱電対
が28 Kも高い値を示していたが、配管との接触部の見直しなどを行ったところ、両者の差は60 K付近において1 K程度に収まった。
2P-p03:小田 (KEK) らは、1段パルス管冷凍機の蓄冷材としてステンレスとリン青銅メッシュを使用しときの性能を報告した。到達温度は77 K
で、他の班より高い結果となった。これは圧力切替えとして,他の班の電磁バルブとは違い、ロータリーバルブを使用したことが要因の一つの
可能性がある。圧力波形などから原因を追究していくとより楽しいと思う。
2P-p04:重松 (岡山理大) らは、大学初年次における「物理教育」に関する取り組みを報告した。座学だけではなく、それに結び付く学生
参加型の実験を取り入れることで、受講学生の自然科学に対する探求心や好奇心が高まったアンケート結果が得られている。


伝熱・磁気冷凍 2P-p05-08 座長 高田 卓

4 K程度の極低温機器を無冷媒冷却する際に有用な高純度アルミニウムに関する接合方法の比較について報告があり、溶接方法・ねじ止め・
酸化被膜の影響を抑えるための金メッキについて溶接棒に使用するアルミ純度の影響や評価時の溶接部の観察や処理について議論が盛り
上がっていた(「2P-p05:秋山(住友化学)」)。また、ヒートスイッチを簡便に自作する試みについては極低温に経験豊かな聴講者たちから
様々な加工方法へのアドバイスが送られており、今後の性能向上が期待される(「2P-06:竹内(摂南大)」)。冷媒の循環冷却にクライオ
ファンを使用する場合についての数値計算では、実験による実証のハードル・実応用場面に合わせた実験セットアップについてなどについて
議論がされていた(「2P-p07:杉原(東工大)」)。そして、室温磁気冷凍を実用に近づける為に永久磁石のローテーションと冷媒の流量の
出入りを1つのモーターで実現するべくカム機構を採用する試みが展開されており、流量や位相の最適値や実装時のサイズ問題使用する
シリンダピストンなど実装を意識した議論が交わされた(「2P-p08:濵岡(東工大)」)。


HTS交流損失・導体化 2P-p09-12 座長 土屋 雄司

2P-p09:近森(鹿児島大)らは、ACロスの精密測定に向けた、測定装置の磁場分布改善について報告した。補正コイルによって磁場分布を
改善し、キャンセル残りが20-40%改善したとした。磁場振幅は最大0.1 T、周波数は55.4 Hzであった。
2P-p10:柳澤(山理大)らは、超伝導モータの界磁コイルにおけるACロスについて、T-A法を用いた数値計算を報告した。損失は周波数、線材
間距離に依らず、線材数に比例するとした。
2P-p11:藤田(フジクラ)らは、CORC状のREBCO線材のスパイラル導体を作製した。長さ200 mmまで試作しており、Φ5の銅フォーマに
最大6枚の線材を巻き、導体曲げ径Φ16程度まではIcの劣化がないとした。今後、端末処理、長尺化を検討するとした。
2P-p12:GARFIAS(総研大)らは、REBCO線材積層STAR導体にパルス通電した際の電流分布の実験および数値計算について報告した。相互
インダクタンスを考慮すると全体電圧の振る舞いが一致するとした。ホール素子アレイにて磁場分布も測定しており、今後、実験的な
電流分布測定が望まれる。


HTSコイル(2) 2P-p13-19 座長 馬渡 康徳

REBCOコイルに関連した電磁気的・熱的挙動に関して7件の報告があった。
2P-p13:島田(早稲田大)は、無絶縁REBCOコイルの励磁特性を等価回路モデルのみで解析する手法について報告した。パンケーキコイルを半径
方向に分割し、さらにREBCOテープ幅方向にも分割した各要素に等価回路を割り当てる手法により、正確かつ簡便に特性評価できることを示した。
2P-p14:日浦(早稲田大)は、無絶縁REBCOコイルに外部保護抵抗を接続しないでテープ層間の接触抵抗によりコイルを保護する手法について
数値シミュレーションを行った。テープ線材層間の接触不良やテープ線材の劣化が多少あっても、層間接触抵抗での蓄積エネルギー消費により
コイルを保護することが可能であることを示した。
2P-p15:大石(早稲田大)は、無絶縁REBCOコイルの局所劣化をピックアップ・コイルにより監視する方法について報告した。線材の一部に劣化が
ある場合のピックアップ・コイルの監視電圧について数値シミュレーションを行い、ピックアップ・コイルの配置による監視電圧の振舞の違いを
明らかにした。
2P-p16:折原(早稲田大)は、スケルトン・サイクロトロンREBCOコイルシステム開発の一環として、1/2スケール実証用コイルシステムの励磁特性
試験を行った。台形波状に通電電流を変化させて励磁し、コイルシステムの両端電圧や粒子加速面の磁場分布について、励磁速度を変えて測定した
結果を報告した。
2P-p17:中西(関西学院大)は、液体水素浸漬冷却・外部磁場中での高温超電導コイルの冷却安定性の解明に向けて、REBCO外部磁場コイルを製作
して液体水素中で励磁試験を行った。JAXA能代ロケット試験場での液体水素冷却通電試験装置を用いて、外部磁場コイルの安定な励磁と設計どおり
の磁場発生を確認した。
2P-p18:栗賀(新潟大)は、一般産業機器用のマグネットへの適用に向けた、レーストラック型の無絶縁HTSコイルの通電特性について報告した。
通電したコイルにヒータにより局所的発熱を与えたときの温度変化の測定結果は、等価回路による数値シミュレーション結果とほぼ一致すること
を報告した。
2P-p19:白石(山口理科大)は、異常横磁界効果により高温超電導コイルの遮蔽電流磁界を低減する手法に関して、トロイダル型の消磁用銅コイル
による漏洩磁界の数値解析について報告した。消磁用コイルの巻数精度に偏りがあると、漏洩磁場が大きくなることを明らかにした。


電力・磁場応用 2P-p20-24 座長 川畑 秋馬

2P-p20:橋本(明治大)らは、REBCO線材を用いた電磁力平衡ヘリカルコイルの製作実現性の検討のために開発中のモデルコイル用小型巻線機に
おいて、従来一体型であった線材収納ボビンと巻線ヘッドを分離させた構造に改良することで、目標の13層連続巻線が可能となる見通しが得られた
ことを示した。
2P-p21:福本(鉄道総研)らは、超電導ケーブルを直流電気鉄道のき電線へ適用した際の短絡故障等による過電流への対応確認のために、鉄道故障を
模擬した短絡電流通電試験を行った結果、絶縁抵抗や臨界電流値の低下は見られないなど、鉄道環境において想定される異常状態にも耐えうる良好な
結果が得られたことを示した。
2P-p22:石原(鉄道総研)らは、超電導き電ケーブルの長距離化のための接合技術開発に関する実験結果として、2枚のBi系超電導線材の接合長を変化
させたときの試料の曲げ特性などについて報告した。
2P-p23:赤坂(鉄道総研)らは、同じく超電導き電ケーブルの長距離化に向け、低融点合金を用いたBi系超電導線材の接合条件について有限要素法に
よる電磁解析により検討し、接合長によらず臨界電流値がほぼ同じであったことや、接合長や低融点合金の接続厚みを変えたときの接合抵抗値の結果
などについて示した。
2P-p24:橋本(神戸大)らは、電磁力を利用して油混じりの海水から油を分離する装置の性能向上に関する検討結果を報告した。装置内の分離空間に
整流板を設置することで海流の乱れを抑制でき、分離率の最大値が向上することを実験的に示した。






12月6日(水)
A会場

SCSCケーブル 3A-a01-07 座長 東川 甲平

3B-a01:雨宮(京大)らは、リール・トゥ・リール式ケーブル作製機による長尺実ケーブル作製を含めた進捗概要について報告した。実際に
作製された5.2 m長のSCSCケーブルを演台の上に置いてあり、参加者が見学できるようになっていた。セッション後も多数の参加者が見学に
訪れ、議論が盛り上がっていた。
3B-a02:重政(京大)らは、様々な条件における交流損失の実験則に基づく評価について報告した。理論と実験則を組み合わせることによって、
限られた実験から様々な条件の交流損失を予測できるようになっていた。
3B-a03:上垣(京大)らは、スパイラル銅複合マルチフィラメント薄膜高温超伝導線材における銅メッキ層電気抵抗率と結合時定数の温度依存性
について報告した。概要集の図3には修正があるということである。フィラメント間抵抗の銅メッキ厚依存性について、電流パスや残留抵抗の
違いから議論されていた。
3B-a04:小山(京大)らは、スパイラル銅複合マルチフィラメント薄膜高温超伝導線材のフィラメント間分流と熱暴走に対する保護について
報告した。結論としてはSCSCケーブル特有に悪い点はなく、通常の単線と同様の条件で熱暴走が起きることを示していた。
3B-a05:曽我部(京大)らは、交流クエンチ試験について報告した。誘導電圧の除去によってクエンチ検出が可能であること、1 kAの通電にも
成功していることを発表していた。
3B-a06:曽我部(京大)らは、数値解析によるSCSCケーブルの保護特性の基礎的評価について報告した。熱解析と連成させ、素線間の分流の
様子や、コアへの分流の様子などを示していた。
3B-a07:江崎(京大)らは、機器環境下での交流損失のケーブル形状依存性について報告した。大規模な解析を駆使し、通電損失の影響が
大きい条件、磁化損失が支配的な条件を明らかとしていた。


医療用加速器 3A-a08-10 座長 宮崎 寛史

「3A-a08:江原(住重)」陽子線向けの超電導サイクロトロンに関して、主に誤差磁場の影響について報告された。磁場補正方法として、鉄片を
使った一般的なシミングだけでなく、磁極の機械加工、コイル位置調整を行い、必要な磁場精度を達成した。
「3A-a09:吉藤(早大)」スケルトン・サイクロトロン用REBCOコイルの遮蔽電流磁場の解析手法について報告された。無絶縁コイルの遮蔽電流
磁場の振る舞いの計算は時間がかかるため、回路解析のみを用いることで計算時間の短縮を行なった。
「3A-a10:植田(岡山大)」スケルトン・サイクロトロン用REBCOコイルには電磁力に耐える構造とするためYOROI構造を適用している。歪みゲージ
を用いた実測値と数値解析による計算値との比較結果が報告された。一部歪みが大きい箇所があり、原因を引き続き調査していく。


超電導・低抵抗接合 3A-p01-05 座長 石原 篤

「3A-p01:横山(JASTEC)」から、量産評価用ジョイントテスト装置の開発として発表がった。インダクタンスを下げることで測定感度を上げた
もので、1条件を10分で10-13 Ωオーダーの判定ができるとのことであった。
「3A-p02:高島(産総研)」から、超伝導Nb3Alペーストの作製と接続技術として発表があった。Nb3Alペーストの収縮率は25%であり、XRDで単相の
Nb3Al膜が確認できたとのことであった。
「3A-p03:江口(東芝)」から、REBCO線材の低抵抗接続技術と臨界電流特性評価として発表があった。超電導層表面に、接続層としてGdBCO粒子と
MOD溶液とを混合したスラリーを塗布し、接続したもので、31 Aの臨界電流値を確認したとのことであった。
「3A-p04:武田(NIMS)」から、Bi-2223超電導接合の抵抗と臨界電流の磁場角度依存性として発表があった。超電導接合の接合抵抗と臨界電流の
磁場角度依存性について報告があり、接合抵抗が転移する角度は磁場によって異なったが、磁場の垂直成分は等しかったことのことであった。
「3A-p05:奥村(室工大)」から、Bi2223線材の小型コイルの永久電流測定として発表があった。JIM法で接合した超電導接合を適用し、コイルの
時間電流特性から特性抵抗を導出したところ、3.5×10-11 Ωであったとのことであった。




12月6日(水)
B会場

HTS特性評価 3B-a01-06 座長 小田部 荘司

6件の発表はすべて会場から行なわれてoViceによるハイブリッドの講演配信はまったく問題なく行なわれた。
3B-a01: 呉(九大)らは機械学習を利用してREBCO線材の局所不均一性を4つのクラスに分けて統計的な分布を求めた。その結果従来の結果を
よく説明することができ、省力化と新たな情報の抽出に成功した。
3B-a02 永田(鹿児島大)らはREBCO線材を集合させた大容量導体の健全性を診断する装置の開発を行なった。2つの対称的なコイルをバランス
させることにより測定精度を上げることに成功した。今後、実際のサンプルを使った損失測定を行なう。
3B-a03: 土屋(東北大)らは2 kAのパルス電源の開発に成功し、実際に臨界電流密度特性を測定した。次は5 kAの通電を試みる。
3B-a04: 小川(新潟大)らは交流通電における過電流条件を調べた。その結果REBCO線材の保護層としての銀層の厚さを変えることにより分流
を利用して損失を減らすことができることを実験的に示した。
3B-a05: 作間(山梨大)らは1つのサファイヤだけで2つのモードを使って表面抵抗測定ができる装置の理論的な設計を行なった。その結果
16.99 GHzと17.04 GHzで2つの違うモードを実現できることを示した。
3B-a06: 長村(応用科研)はBSCCOテープの平曲げに対して縦曲げを加えたときの臨界電流特性の劣化について調べた。その結果圧縮でも引っ
張りでも劣化することを示した。


バルク作製・着磁 3B-a07-11 座長 赤坂 友幸

3B-a07:元木(青学大)からは、SDMG法からなるREBCOリングバルクについて、様々な内外径で作製したバルクの磁場分布評価の結果などの報告が
なされた。他のTSMG法で作製されたバルクと比べ、比較的高い捕捉磁場を示し、SDMG法がリングバルクの作製に有効であることを示した、また、
3B-a08:仙波(青学大)からは、SDMG法で作製したGdバルクを種板として用い、その上に再度SDMG法によりYバルクを作製した結果が報告された。
上記を種板として用いた場合でも、結晶育成により高均質なバルクを作製できたとのことであった。
3B-a09:菊池(東京農工大)からは、放電プラズマ焼結法により作製したKドープBa122多結晶バルクの捕捉磁場特性等の結果が報告された。質疑
では、バルク体の大型化や機械強度の重要性について議論がなされた。
3B-a10:Shang(足利大)からは、REBCOに対する軟鉄ヨークの形状や配置が、パルス着磁にどう影響するかが報告された。また、3B-a11:横山
(足利大)からは、REBCOバルクへのパルス着磁について、バルクへの細孔加工と軟鉄ヨークを組み合わせた結果について報告があった。昨今の
バルクは結晶性が良く、構造的に弱い部分を作るとパルス磁場が入りやすいというコメントがなされた。


送電ケーブル 3B-p01-05 座長 筑本 知子

3B-p01:張(九工大)らは内層と外層と逆方向に巻いた2層の超伝導ケーブルについて、内層または外層の素線の一部を壊した時の通電状態にある
超伝導ケーブルの表面磁場とそれによるケーブルの臨界電流値の変化について、計算結果を示した。素線の幅方向の表面磁場分布がどのように
なっているのかについての質問があった。
3B-p02:金山(SWCC)らは航空機用超電導ケーブルの接続部の開発について報告した。ケーブルはIc値約2400 Aの積層構造(30枚積層)であり、
それについてプラグイン構造のMulti-contact接続の接続部の開発を行った。最初はケーブル端部に端子を一括してはんだ付けをしたがIc値がかなり
低下したため、素線一層毎に銅板をはさみこむ構造としたところ、Ic値の低下が抑制されることが確認された。
3B-p03:山口(九工大)らはRE系超電導線材により単層縦磁界直流超伝導ケーブルを作製し、過冷却状態における通電特性の測定結果を示し、縦磁界
により、Jc低下が抑えていることを報告した。
3B-p04:富田(鉄道総研)は鉄道超電導ケーブルの営業運転に至るまでについて、2007年からこれまでの様々なプロジェクトの概要を述べるとともに、
特に今回国土交通省から営業認可を受けるにあたって必要とされた安全性に関わる各種試験について結果とともに紹介した。今回の認可により今年
第一号路線において世界初の営業線(客乗車)実用運転開始となる。
3B-p05:山口(中部大)らはメーカーにより接続されたBi2223線材について短絡電流試験を行った結果について報告し、接続部があっても短絡電流特性
にほとんどその影響がないことを述べた。一方、Icの20倍近くまで短絡電流を流した場合には、接続部は異常がなかったが、保護用につけている銅
シースのはんだが溶けて銅シースが浮いているところが見受けられた。




12月6日(水)
C会場

計測・基礎 3C-a01-06 中川 久司

本セッションのすべての発表において、多くの質疑応答があり活発な議論が行われた。
3C-a01佐藤(神戸大)らは、3Dプリンタ製ヘリカル流路内蔵のひずみゲージを用いた液体水素流量計を開発し、液体窒素温度における管内圧力と表面
ひずみの測定を行った。圧力-ひずみ間に良好な直線性が得られ、またひずみ測定の安定性、再現性が良いことがわかった。
3C-a02國本(岩谷産業)らは、可視化配管と高速度カメラによる二相流動状態の観察から、静電容量式ボイドメーターによる気相 / 液相の混合割合の
測定誤差は±10%、その主な要因として両相の流速度の違いであることを見出した。
3C-a03河江(九州大)らは、ナノ超伝導体に捕捉された水素の量子的振る舞いを解明するため、Nb製ジョセフソン接合の水素による微分コンダクタンス
特性変化を測定(点接合分光法)し、水素とクーパーペアとの衝突によると考えられるスパイク状信号を観測した。
3C-a04幡井(神戸大)らは、液体水素輸送の安全運用のため、大容量タンク内の液体水素の状態変化を解明すべく、液体窒素を代替物質とした実験を
行っており、その結果について報告した。
3C-a05武中(神戸大)らは、液体水素輸送時の動揺による蒸発損失を低減するため、液体水素の状態変化への横振動による影響を詳細に調べた。振動が
止まると振動エネルギーが熱に変換され、蒸発量が増加することを報告した。
3C-a06神田(中部大)らは、抵抗変化を利用したひずみゲージにおいて、四端子測定法を採用し、アナログ差分回路を導入することで、リード線の温度
変化と見かけのひずみを除去し、その高感度化に成功した。


低温化合物超電導体 3C-a07-10 座長 斉藤 一功

3C-a07 岩手大 箱石裕人:超電導線材の熱的安定性を向上させることを目的としたGd2O3の添加によって、TiやHf添加でみられるNb3Sn生成促進の効果
が見られた。貴重な発見なので、今後はそのメカニズムの解明を進めていただきたい。
3C-a08 上智大 浅井航希:丁寧な実験により、Hf単独でもSn拡散の駆動力が大きな場合にはNb3Snの結晶粒 の微細化が起こることを明確に示した。今後、
線材への適用によりJcの向上が得られることを示していただきたい。
3C-a09 NIMS 菊池章弘:開発を進めている極細Nb3Sn線材について量産化に向けた大型試作でも良好な結 果が得られており、実用化に向けた期待が持てる。
3C-a10 NIFS 高畑一也:発表の報告との直接の関係は薄いが、テープ状に加工した場合に50%程度Icが増え るということが印象的であった。この辺りの
メカニズムについての報告があっても よいと感じる。